信長斎藤道三訪問
信長がどんな恰好で来るか見て来てやらうと物陰からのぞきみて、やゝこれはと目を見張った。 信長の馬上のいでたちは聞きしに勝る珍妙奇怪なものであったのだ。 髪は萌黄の平打で巻立てた茶筅つぶしに結び湯かた染のかたびらの袖をはづし腰の、廻りにはまるで猿曳きのように火打袋、ひょうたんの袋など七つ八つぶら下げ長柄の大少をわら縄で巻きつけている。
しかしその前後には弓、鉄砲五百丁、三間柄の朱槍五百本を押立て、異型の威風あたりの目をうばうばかりである。道三は首を振ってうなった。近道からそっと正徳寺に戻って着かへをして信長を待った。
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